はじめに
NetBox は OSS の DCIM/IPAM です。スイッチやルーターなどのデバイス情報を定義したり、IP アドレスの割当状態を管理したりできます。
デバイスの定義を工夫をすると、パッチパネルを模したものを作成できます。
ポイントは、パッチパネルのインターフェースをデバイスの Interfaces
ではなく、Front Ports
や Rear Ports
で定義することです。
これにより、[デバイスA]---[パッチパネル]---[デバイスB]
のような接続にした際でも、デバイスAのネットワーク機器的な対向はデバイスBという見え方になります。かつ、特定の操作をすると、パッチパネルのどのポートを経由して対向のデバイスに接続しているかも確認できます。このように、ネットワーク的な対向と、物理的な対向を分けて管理できるようになります。
もともとは、公式ドキュメントのFront Ports の項目あたり Patch Panel についての言及があって読んだのですが、ピンとこなかったので試しました。
この記事では、デバイスとしてパッチパネルを作成する手順と、通常のデバイスと接続したときに見え方ををご紹介します。もっと再現度を高める工夫があるかも知れませんが、基本はこのような手順になるかと思います。
- 環境
- NetBox 2.9.7
【目次】
■ 作成するパッチパネルと構成
今回は全面背面がそれぞれ24ポートのパッチパネルを2つ作成します。既存の通常デバイス(ルーター)2つの間にそれらを挟む構成とします。実際はいろいろなパターンがあるかと思いますが、応用はできるかと思います。
ネットワーク的には RT1
と RT2
を接続し、物理的には間に PP1
と PP2
が挟まる構成です。これを NetBox で表現します。
RT1
と RT2
は通常のデバイスです。各ポートは Interfaces
として定義します。
■ パッチパネル作成手順
ここから具体的なパッチパネルの作成手順です。
Manufacture、Device Role の作成
Manufacture や Device role
は、通情の device の定義する場合と特に変わりありません。
せっかくなので、それらしく作ることにします。
ここでは、Manufacture として、justdoit
を作成します(架空です)。
Device Role として patch_panel
を作成します。
Device Type の作成と Rear Ports、 Front Ports、 の定義
次に Device Type を作成します。
その後、作成した Device Type に Rear Ports、 Front Ports を定義sます。
Device Type の作成
Device Type として、patch_panel_24
を作成します。24ポートのパッチパネルであることを意図します。
Rear Ports の定義
作成した Device Type patch_panel_24
に対して Front Ports
、Rear Ports
を定義します。このように Device Type 単位でポートを定義することで、この Devive Type を適用したデバイスは、Front Ports
、Rear Ports
の定義を継承します。
まずは、Rear Ports を定義します。(Front Ports の定義時に Rear Ports を割り当てる使用のため、先に Rear Ports を定義します)
Device Type patch_panel_24
の Add Componets 内の Rear Ports
をクリックします。
Rear Ports
定義画面が表示されます。ここでは、Name
に RearPort[1-24]
を入力します。このように範囲指定することで、連番のポート番号をいっぺんにしていてできます。Type
は、今回はメタルケーブルを想定してデフォルトの 8P8C
のままにします。
Device Type patch_panel_24
の Rear Ports
欄に 24 個のポートが定義されたことを確認します。
Front Ports の定義
続いて、Front Ports
を定義します。
Device Type patch_panel_24
の Add Components 内の Front Ports
をクリックします。
Rear Ports
定義画面が表示されます。ここでは、Name
に FrontPort[1-24]
を入力します。Front Ports と Rear Ports を 1:1 で対応付けるために、Rear ports
で、すべてのポートを選択します。
Device Type patch_panel_24
の Front Ports
欄に 24 個のポートが定義されたことを確認します。Front Ports と Rear Ports の対応付けも確認します。
なお、今回は効率化のために、Device Type 単位で Front Ports
、Rear Ports
を定義しましたが、もちろん デバイス単位でも定義できます。
デバイスの作成
パッチパネルとしてのデバイスを2台作成します。
Manufacture、Device Role、Device Type は、これまで作成した Justdoit
、patch_panel
、patch_panel24
を指定します。
Site は、別途作成済みの mysite1
を指定します。1つめの Name
は PP1
とします。
デバイス作成後の画面を確認すると、Device Type patch_panel24
で定義した Front Ports
、Rear Ports
それぞれ24ポートが、このデバイスにも適用されたことがわかります。
同様の手順で、 PP2
も作成します。
なお、今回は省略しますが、パッチパネルを含むデバイスは別途定義したラックに配置することもできます。
■ 接続手順
先程作成したパッチパネル間、既存のデバイスとパッチパネルの間をそれぞれ接続します。
パッチパネル間の接続
まず、パッチパネル PP1
と PP2
間を接続します。今回は、24ポート分のケーブルがすでに敷設されてるものとして、すべて接続します。
Rear Port
同士を接続することになります。
接続手順は以下のとおりです。
パッチパネル PP1
の画面を開き、RearPort1
の横の緑の接続アイコンをクリックし、Rear Port
をクリックします。
接続画面が表示されるので、接続先として PP2
の RearPort1
を選択します。
他のポートも同様に、PP1
の接続します。(なにか一括でできる別の方法をとったほうがいいかも知れません)
- 対応表
A Side Device | A Side Name | B Side Device | B Side Name |
---|---|---|---|
PP1 | RearPort1 | PP2 | RearPort1 |
PP1 | RearPort2 | PP2 | RearPort2 |
略 | 略 | 略 | 略 |
PP1 | RearPort23 | PP2 | RearPort23 |
PP1 | RearPort24 | PP2 | RearPort24 |
PP1
の Rear Ports から見ると、このような表示になります。
PP2
の Rear Ports から見ると、このような表示になります。
ここまでで、パッチパネル間を Rear Ports 同士で接続しました。
通常のデバイスとパッチパネルの接続
通常のデバイスとパッチパネルを接続します。
RT1 と PP1 の接続
まず RT1
と PP1
を接続します。
接続手順は以下のとおりです。
デバイス RT1
画面の Interfaces
欄の GigabitEthernet1
の横の緑の接続アイコンをクリックし、Front Port
をクリックします。
接続画面が表示されるので、接続先として PP1
の FrontPort1
を選択します。
RT2 と PP2 の接続
同じように、RT2
と PP2
を接続します。
デバイス RT2
画面の Interfaces
欄の GigabitEthernet1
の横の緑の接続アイコンをクリックし、Front Port
をクリックします。
接続画面が表示されるので、接続先として PP2
の FrontPort1
を選択します。
ここまでで、目指していた以下の接続になりました。
接続状態の確認
接続状態をを RT1
側から確認します。
このように、Interfae GigabitEthernet1
の対向(Connection)には、通常のデバイスである RT2
が表示されます。ネットワーク機器としての対向です。パッチパネルである PP1
ではありません。私はこのような表示のほうがありがたいです。
物理的な対向であるパッチパネルを書くにするには、以下の Trace アイコンをクリックします。
するとケーブルのトレース結果が表示されます。物理的なつながりとして、[RT1]---[PP1]---[PP2]---[RT2]
が確認できます。もちろん、あいだの PP や反対側の RT2
からも確認できます。
もとの構成図にケーブル番号を対応させるとこのようになります。
■ おわりに
NetBox で、パッチパネルをデバイスとして作成し、通情のデバイスと接続したときの見え方を確認しました。
ネットワーク機器としての接続と、物理的な接続をそれぞれ管理できるのは便利だと思いました。