はじめに
2023/06/14-16(現地展示期間として)に開催されたInterop Tokyo 2023に参加してきました。
今年も ShowNet のさまざまな機器や、気になるブースやセッションがありましたので、いくつかまとめます。
※ 口頭で聞いた内容を思い出しながら書いた記述が含まれます。正確な情報は一次ソースをあたっていただくようお願いします。
■ ShowNet
Interop といえば ShowNet。以前は機器を眺めてニヤニヤするだけだったのですが、ここ数年はなるべく説明を聞いたり読んだりするようにもしました。
昨年に続いてウォーキングツアーにも参加しました。一人でザーッとみて、ツアーに参加して、また一人で見るという流れにしました。
新しくて分からないものが満載ですが、気になったトピックをピックアップします。
N-* ラック
ラックがたくさん並ぶ象徴的な箇所です。
エクスターナル(対外接続)部分
ShowNet、つまり Interop 会場と外をつなぐ対外接続部分は、
の3の回線と、IOWN による回線も引かれていたそうです(エクスターナル図 PDF)。
今回では「8波」「8waves」という表現も見かけました。そもそも、Open APN や IOWN といった言葉は今回で初めて知りました。光信号のまま、速く、低遅延な通信を実現するネットワークのようです。
「8波」「8waves」はトポロジー図(PDF)では、虹色として描かれていました。
当日は全然情報を追えなかったので、後日以下のページやインタビュー動画を拝見しました。
NTT、IOWNを用いた低遅延・高品質映像のデモを実施 ShowNetのインフラにも採用 - クラウド Watch
SRv6
SRv6 が今年も使われていました。
相変わらず私は技術的にキャッチアップできていませんが・・。とてもありがたいことに、解説記事がありました(「SRv6によるバックボーンネットワーク」)。
/30 の IPv4 アドレスを管理する必要がなく、自動付与される IPv6 リンクローカルアドレスのみでよくなるのはいいなと思いました。
EVPN-VXLAN
こちらもありがたいことに、先ほど紹介したページに解説がありました(「EVPN-VXLANによるユーザ収容ネットワーク」)。
ユーザとは、ブース出展者のことになるかと思います。
興味深かったのは冗長化の方式です。上記の記事には以下の解説があります。
EVPNを利用することで、ひとつのセグメントに対してデフォルトゲートウェイとして動作する複数の機器、2023年のShowNetでいえば mx10004とne8000m4-2は、ひとつのユーザセグメント(VXLANセグメント)に同じIPアドレスと同じMACアドレスを持ち、どちらも同時に動作できるActive-Active構成なデフォルトゲートウェイとして冗長性を確保しました。
ちょっと気になって Twitter で聞いてみたところ、これは「EVPN Anycast Gateway」によるものとのことでした。(ご返信ありがとうございました!)
Bright ZR+ 400G
通常の ZR より強い光が出せて、アンプ不要で長い距離が飛ばせるそうです(解説動画)。
400Gbps 対応 Fortigate
ファイヤーウォールのインターフェースも 400G 対応の時代。
CSコネクタ
SC コネクタと誤読してしまいそうですが、CS コネクタです。省スペースで、パッチパネルの高密度化を実現。
Wi-Fi 6E
来場者向けに様々なタイプの Wi-Fi アクセスポイントが設置され、今年はホール6と7に Wi-Fi 6E (6GHz帯)のアクセスポイントも設置されていたようです。
残念ながら私の端末は非対応なので試せませんでいた。ツアーで説明いただいた段階では、全体のうちの 3%ほどの利用割合とのことでした。
「時刻同期警察」
NTPより精密な時刻同期な PTP のサーバーが今年もありました。
去年はユースケースの一つして 5G があることを知ったのですが、今年は Media over IP の分野でも利用されていることを知りました。リアルタイム性が求められる分野では、より精密な時刻同期が求められるのですね。
2種類の L1 スイッチ
光の配線を物理的に切り替える L1 スイッチは2種類見かけました。
1つは ROME mini。去年も見かけて面白いなと思いました。切り替える速度は早くないけれど、切替後は停電時でも通信ができるタイプ。
もう一つは Polatis。停電時は通信ができなくなるが、切り替える速度は早い。
それぞれの特徴を活かして使い分けをしているそうです。
試験自動化・トラフィックジェネレーター
6/16 の ShowNet ステージ「トラフィック生成だけじゃない、多彩なエミュレーションと試験手法でShowNetを測る!」で聞いたのですが、試験自動化におけるトラフィックジェネレーターとして、 ixia-c というツールを使っていたそうです。
GitHub - open-traffic-generator/ixia-c: Ixia-c Traffic Generator
ixia ってあの ixia から来てるのでしょうか。初耳のツールでした。あわせて、Open Traffic Generator API というトラフィックジェネレーターに与えるパラメーターの標準化したものがあることも知りました。
D-* ラック
N-* ラックから通路を挟んだ側のラックです。
説明を聞いていると「出島」という言葉が耳に入ったので、もしかして D って Dejima の D なのでしょうか。
水冷サーバー
水で冷やすサーバー。将来的には空調のない環境でも安全に動作するような世界観でしょうか。
背面を撮り忘れましたが、以下の記事で見れます。
[画像] 最先端・次世代ネットワーク技術が集結――、Interop Tokyo 2023の「ShowNet」レポート(50/54) - クラウド Watch
私にとってはなじみのある 19インチではなく、Open Compute Project (OCP) 企画の 21インチラックだそうです。…などと言っていますが、OCP 自体初めて知りました。
リモート接続
ブラウザのみで SSH ができる SmartGS(後継的な製品は SmartJumper とのこと)や、Keeper Connection Manager など、便利で安全に ShowNet のリモートオペレーションを実現する製品たちです。
S-* ラック
ShowNet ステージの登壇場所の背面近くのラックです。
AWS Outposts
オンプレ AWS と表現すればよいでしょうか、AWS Outposts のサーバーがありました。日本に2台しかないうちの1台とのことで、なかなかお目にかかる機会がないと思います。
ローカル5G
免許を取得して、実際に Sub6 の電波を会場内に吹いていたそうです。一方、膜で囲まれた中ではミリ波が使われていたようです。
参考: ShowNet VR ウォーキングツアー
後日、ShowNet VR ウォーキングツアーが公開予定という案内がありました。ラックのある通路を VR で自由にあるくような体験ができ、ラック脇のホワイトボード以外にも様々な情報が見れる工夫がされているそうです。Twitter(@ShowNet_NOCTeam?、@InteropTokyo30?)などのSNSでお知らせされるようです。
■ セッション
ShowNet ステージ
ShowNet の機器がたくさんある付近で「ShowNet ステージ」という形で ShowNet の見どころなどの紹介がありました。オンラインでも見れました。
ShowNet 2023 | Interop Tokyo 2023
後日 Interop Tokyo の YouTube チャンネルで、アーカイブが公開予定という案内がありました。見れてないセッションもたくさんあるので、公開されたら見てみたいと思います。
内容そのものではないのですが、面白いと思ったのが、ラグの少なさです。Day3 6/16 は自宅で見ていたのですが、同じ自宅の Wi-Fi 内の Windows PC と iPad で同時に ShowNet ステージを見ていたところ、かなりラグが小さかったです。
現地のスライド投影画面の上に秒単位で表示されるデジタル時計がありました。PC と iPad 同時に映るように写真を取ったところ、少なくとも秒単位では同じでした。
比較にはならないかもしれませんが、適当に選んだ YouTube Live で同じことをすると、ラグは10秒程度ありました。ShowNet ステージ のラグの小ささも技術の工夫によるものでしょうか。ジャンル的には Media over IP ?
現地にいるときに現地と配信も比較しておけばよかったです。
クラウドネイティブで提供するZero Trustネットワークアクセス(Cloudflare 社)
去年の冬くらいから、Cloudflare ゼロトラスト系のサービスが気になって、少し試してたりしていたので、気になって聞きに行きました。
雑な箇条書きですが、気になったことをまとめます。
- 参考資料: ゼロトラスト・アーキテクチャ(邦訳: PwCコンサルティング合同会社)
- 依然として電子メール経由のインシデントは多いので、対策の重要性は高い
- ヘッダー From、エンベロープ From だけでなく、本文の文脈も判断する
- Cloudflare のサービスは自社提供。どの POP でも同一のサービス群を提供
- DLP の機能で、カテゴリとして ChatGPT を用意。credential のみ利用不可のような制御が可能
- クラウドの設定ミスを見つけられる○○(サービス・機能名を忘れてしまいました・・)
- DNSレベルの対策は、上位プロトコルに依存せず有効。C2C サーバーとの通信も検出してブロックできる
- 事例: クラスメソッド、日本航空
■ 各社ブース
事前に行こうと思っていたブースや、たまたま目に入って気になったブースにお邪魔しました。
NTTアドバンステクノロジさん
ブース紹介ページ: https://f2ff.jp/2023/interop/exhibitor/show.php?id=1572&lang=ja
ネットワークを可視化や自動化をする「NetworkBrain」をご説明いただきました。
通常、手作業によるトラブルシューティングは、ネットワーク構成図を見ながら各機器にログインして show コマンドを実行して状態を確認しながら進めることが多いと思います。NetworkBrain では、ネットワークの図を自動生成して、疎通状態などのトラブルシューティングに必要な情報を同時に表示してくれます。内部的には SSH、TELNET 以外にも SNMP、LLDP などを利用しているそうです。
図でおもしろいと思ったのは L2 レベルの接続と L3 レベルの線がそれぞれ別で同時に表示されている点でした。他、ネットワーク機器のアイコンのそばにテキストラベルを貼れて、その内容をカスタマイズできる点もかゆいところに手が届いているなと思いました。ただの静的なテキストではなく、showコマンドの結果をもとに表示できるとのこと。
ロジックベインさん
ブース紹介ページ: https://f2ff.jp/2023/interop/exhibitor/show.php?id=1674&lang=ja
コンフィグ管理ツール「Net LineDancer」を中心にご説明いただきました。
ネットワーク機器のコンフィグの履歴を取って差分を確認できるところまでは想像できたのですが、その他にどんなことができるのだろうと気になっていました。
Read 系の処理だけではなく、設定変更もできるようでした。たとえば、あらかじめ定義したコンフィグのポリシーにあってないコンフィグの検出や修正をしたり、複数機器への一括変更したり、過去に取得したコンフィグのものに戻す機能もあるそうです。
Read 系でも、コンフィグ取得だけでなく、シリアル番号のようなハードウェア情報のレポートも作れるようです。
この手のツールで気になる連携の仕方ですが、いただいたパンフレットには
とありました。
古河電気工業さん / 古河ネットワークソリューションさん
ブース紹介ページ: https://f2ff.jp/2023/interop/exhibitor/show.php?id=1654&lang=ja
今年の ShowNet に導入されている FX2 などをご紹介いただきました。
ところで、古河さんのネットワーク機器はこの FX2 含め、 1U のもののイメージがありましたが。別途 6/16 の ShowNet ステージでは「1U にこだわっている」と古河さんの方がおっしゃっていました。ナルホドと思いました。
他にも、VM ではなくコンテナとして動くネットワーク機器についてもご説明いただきました。説明用のパネルの中に「Containerlab導入検討」(正確な文言は忘れてしまいました)と書いてあったのも気になりました。コンテナベースのネットワーク機器を検証用途などで気軽に作って壊して、ができると便利になりそうだなと思いました。
シスコシステムズさん
ブース紹介ページ: https://f2ff.jp/2023/interop/exhibitor/show.php?id=1801&lang=ja
ブース上部に「Programmability」が掲げられていたので Cisco NSO の話を伺いました。
NSO はマルチベンダー対応の自動化プラットフォーム。特徴的だなと思ったのは、機器のコンフィグ状態を保存する独自のデータストアが含まれる点です。もし実機とデータストア間の情報が異なればそれも検出できるとのこと。
他、切り戻しへの対応レベルの高さも伺えました。切り戻し時の no コマンドを考えるのは、意外と難易度が高いことがありますが、NSO では内部的に no コマンドを自動生成してくれるそうです。また、複数機器に設定変更をする際、まとめて1つのトランザクションのように扱える点も気が利いていると思いました。
他、可視化の SaaS である Cisco Crosswork Network Insightsもご紹介いただきました。
テレノケートさん
シスコの DevNet 系の資格対策のトレーニングもあるということで、ご説明をしていただきました。
200-901 DEVASC だけでなく、350-901 DEVCOR や、300-435 ENAUTO に対応したコースもあって頼もしく思いました。
手を動かしながら学習しようとすると、環境の準備で大変なこともあると思うので、講義+実機演習という形式なのもいいですね。
エーピーコミュニケーションズ(弊社)
ITインフラ自動化サービスの「Automation Coordinator」や、ファイヤーウォールのテスト自動化製品「NEEDLEWORK」のほか、今年は「データ&AI分析基盤の支援サービス with Databricks」のご案内をしていました。
ブースにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。
おわりに
Interop Tokyo 2023 の ShowNet やブース、セッションで気になったことをまとめました。
技術的なところ、特に ShowNet は難しいですが、毎年見ていくことで去年と違うところにも目が届くようになり、少しだけ理解が進むような感覚がありました。ただ、もうちょっと質問が思い浮かぶくらいにはなりたいと思いました。
また、ついつい立ち並んでいるラックの方を見てしまいますが、今度は Pod も見てみたいと思います。最近は Pod 側に置く機器が少なく(or小さく)、コンパクトになってきているそうです。
物理的に様々なものが見れたりお話が聞ける機会はとてもありがたいです。
ShowNet NOC、STM、各スタッフ皆様、ブースやセッションでご説明いただいたみなさま、ありがとうございました!