はじめに
2023/01/25-27 に山梨県富士吉田市で開催(現地とオンラインのハイブリッド)された JANOG51 Meeting にオンラインで参加しました。
はじめて JANOG Meeting に参加したのが JANOG41 だったので、今回で10回目となりました。
現地は、満席で立ち見禁止というケースもあって、質疑したい人優先、という呼びかけもあったようです。盛り上がったみたいですね。
当日参加したプログラム、現時点でアーカイブ拝聴したプログラムや、全体的な所感についてレポートします。
なお、各プログラム詳細ページからアーカイブ動画が見れます。2023年2月28日までだそうです。
■ Day1
NMSの第一歩 ~OSSによるLab環境の改善~
Cisco CX Delivery CEインターンシッププログラムの過程で作成された、NMS(Network Management System)の内容やデモ、トラブルなどの紹介がされていました。
監視はZabbix、コンフィグ管理はOxidizedを利用されていました。
Git を正としていれば、実機からコンフィグを取得してバックアップする行為自体が不要という考え方もありますが、今回のようにラボ環境だと実機を直越設定変更する機会も多く「実機が正」とする事情があるのだと思いました。
コンフィグのロールバックは、コンフィグの性質上難しい(no コマンドの生成が複雑)場合もあると思いますが、今回は configure replace
を使っているようでした。
Oxidizedで現状対応していない機種に対応させるための model 作りは思ったより簡単そうでした。
ここがヘンだよ日本人の英語コミュニケーション 〜日本人特有の落とし穴を知り、グローバル社会でも活躍できるエンジニアになろう〜
言語自体の壁は確かに高いですが、その先にある習慣や文化の壁がさらに高いのだなと思う内容でした。
他にも、
- 「議論=成長に必要なもの」
- 質問は簡潔に
- 「ベストプラクティスはなんですか?」など。自分が答えづらい質問は相手も答えづらい
- 「謙遜」「遠慮」で損している。面白い仕事は、存在感のある人のところにやってくる。
などなど、日本で仕事している中でも意識すると良さそうな内容がたくさんありました。
[2023/03/06 追記] YouTube に show int さんの動画としてアップされました。
■ Day2
ムーアの法則による高速インターフェース展開予測 2025/2026
物理層の話はあまり詳しくないんですが、インターフェースはどんどん早くなっていきますね・・。
「ブレークアウトアウト」自体、はじめて聞きました。
[LT] 故障対応完全自動化への道
データセンター内の機器の故障時に、各種手配や復旧オペレーションの自動化を進めているお話でした。
- 非定形作業が発生しうる状況
- 手配のような対外手続きを含む
- 物理作業を含む
という点で、完全自動化はなかなかハードルが高そうだなと思いました。
[LT] ロボットを活用したDCオペレーションについて
リモートハンドでサーバーの電源をON/OFFしたり、ランプチェックをしたり、刺激的な世界観のお話でした。
超ネットワーク作ってみた ~「ニコニコ超会議2022」in幕張メッセ~
ニコニコ超会議2022を支えたネットワークの、設計やキッティングの自動化、NOC等のお話でした。
キッティングの自動化が一番身近に感じました。ネットワークエンジニア歴ゼロの状態から、大量の NEC IX 2215 へのキッティング作業をAnsibleを使って自動化されたそうです。キッティング作業なので、最初はシリアル接続で作業する必要があり、コンソールサーバー SmartCS をフル活用。
IX に対応した(少なくとも公式の)Ansibleモジュールがなく、expect を使っていくところは、ちょっとつらそうなところがありました。
処理速度の都合上、SSH接続の設定まではコンソールで行って、そのとはSSH経由で設定するというのは、よく聞きます。
「皆さん仮想ルータ使ってますか?」仮想ルータの使いどころを語る会
仮想ルータは、私自身は検証用途くらいでしか使ったことがないのですが、柔軟性があったり色々便利なイメージがあります。
一方で、活用するにはそれはそれでスキルが必要なのだなと思いました。
■ Day3
システム開発とネットワーク運用の両立に向けた取り組みと課題
弊社のエンジニアがお客様と共同登壇させていただいたプログラムです。
自分たちと向き合い、課題を見極め、手を打っていくという、ある種シンプルなことを丁寧にされているという印象でした。
スキル習熟のための手段として、プログラミングスクールの採用が挙げられていました。会社負担の負担で就業時間内に。個人の情熱に任せず、組織として取り組んでいるのが素敵だなと思いました。
フレーズとしては「価値基準を理解する」と「思考領域の拡⼤と⼿段の多様化」が響きました。
領域を広げる手段として、弊社エンジニアが異文化を持ち込むためたのは、嬉しく思いました。SIer である弊社が、このような関わり方ができたのは新鮮でした。
弊社エンジニアのパートでも触れられていますが、彼が新卒1年目のときに、研修として私から「アウトプットしよう」などの話をしました(公開資料:向き合うエンジニア)。その時のことが、活かされたのが嬉しかったです。
CUEとKubernetesカスタムオペレータを用いた新しいネットワークコントローラをつくってみた
Kubernetes は詳しくないのですが、カスタムオペレータという仕組みは魅力的に感じました。
あと、ネットワークの自動化やIaCは難しいなぁとは思っているものの、うまく説明できていないのですが、資料のP38に出てくる「ネットワークIaCはManyToManyと戦わなければならない」という言葉が気になりました。自分の思考がまだまだ浅いことを感じました。
CUEはずっと気になってはいるのですが、なかなか手が出せていないです。
どうやってつくる? ネットワーク自動化開発チーム
私は部署内の自動化トレーニングの講師もすることもある関係で、とても気になっていたプログラムです。
採用状況は厳しいようです。衝撃だったのが LINE さんがとった対策のお話。学生から応募がなかったので、自分たちのシステムを、流行ってて学生も使える Kubrenetes ベースのシステムにしたとのこと。そしてアルバイトの学生が NFV Rolling Update の仕組みを作ってくれたそうです。発想がすごいです・・。
以下、ディスカッションパートからポイントです。
[1] ネットワーク自動化システム、だれが開発するの?
- トータル的には、ソフトウェアエンジニアからという意見が優勢だった印象です。
[3] 開発業務を内製する?それとも外注する?
- 内製がいいという意見が多い
- 理想は内製だが、外注の場合は「システム開発とネットワーク運用の両立に向けた取り組みと課題」で話されたような体制なら良いのかもしれない
[5] ネットワーク自動化ができる人を育てる?中途採用する?
- 応募はなく、厳しい。なので育てることになる
[6] ネットワーク自動化に必要なスキルや経験、どうやって学んでもらう?
- キュメントは重要
- そのうえで、業務に直結したタスクをやってもらう(浮き輪を付けて突き落とす)。
[9] ネットワーク自動化開発にスーパーヒーローは必要?
- 一番最初に始めた人がスーパーヒーロー
- 最初はそう。その後チームとしてヒーローを無くしていく(いい意味で)
- ナンバー2を育てたり、体制の維持も難しい
- スケールさせたいかどうか重要、
最後、メーカーの方から、教育と最初の一歩をメーカーとしてどう助けられるか、という逆質問がありました。様々な立場が参加して同じ課題に向き合っていく、JANOGらしい一面だなと思いました。私としては、トレーニングや検証用途に利用しやすいライセンスの仮想ルーターなどの提供はありがたいなと思っています。
NETCON Wrap-up
問題環境のセットアップに時間が掛かるなどの課題をContainerlabを利用して解決を試みたそうです。
今回の JANGO では他にも Containerlab について厚かった(Containerlabを使用した商用環境と同等な検証環境の作成とユースケースについて)というプログラムがありました。気になってきました。
アーカイブ視聴予定
アーカイブが公開されているうちに以下のプログラムを視聴しようと思います。
- BGP運用 先に進む一歩 - JANOG51 Meeting
- eSports時代のISPを考える - JANOG51 Meeting
- もし本番ネットワークをまるごと仮想環境に”コピー”できたらうれしいですか? - JANOG51 Meeting
- Containerlabを使用した商用環境と同等な検証環境の作成とユースケースについて - JANOG51 Meeting
熱が冷めないうちにブログを書くというのを優先しているため、見るのはちょっと後回しにしちゃっています。
おわりに
今回は私に馴染みがあるテーマのプログラムが多かったように思います。とても興味深かかったです。
登壇者、スタッフ、スポンサーのみなさまありがとうございました!
参加された方でアンケートがまだの方はぜひこちらから。
JANOG51 Meeting アンケート - JANOG51 Meeting
次回 JANOG52 Meeting は 2023年7月に長崎県長崎市で開催予定です。世の中が今より落ち着き、安心して開催できる状態になっていることを願っています。
参考
show int さんの動画
togetter
私と JANOG
- JANOG50 Meeting in Hakodate 参加・登壇レポート - てくなべ (tekunabe)
- JANOG49 Meeting in Kagoshima 参加レポート - てくなべ (tekunabe)
- JANOG48 Meeting 参加レポート - てくなべ (tekunabe)
- JANOG47 Meeting in Fukuoka 参加レポート - てくなべ (tekunabe)
- JANOG46 Meeting in Okinawa 登壇・参加レポート - てくなべ (tekunabe)
- JANOG45 Meeting in Sapporo に参加して視野を広げる必要性を感じた - てくなべ (tekunabe)
- JANOG44 レポートその1【参加編】 - てくなべ (tekunabe)
- JANOG44 レポートその2【登壇編】ここからはじめよう、運用自動化 - てくなべ (tekunabe)
- [Batfish] JANOG43.5 で「ネットワークコンフィグ分析ツール Batfish との付き合い方」という発表をしてきました - てくなべ (tekunabe)
- JANOG43 レポートその1【参加編】 - てくなべ (tekunabe)
- JANOG43 レポートその2【登壇編】自動化の行き着く先は? - てくなべ (tekunabe)
- JANOG43 レポートその3【ハッカソン編】スタッフ兼参加者として - てくなべ (tekunabe)
- 【JANOG42】Ansible ネットワーク自動化チュートリアルを発表してきました - てくなべ (tekunabe)
- 【JANOG42】私にとっての「つなぐ、つたえる、つみあげる」 - てくなべ (tekunabe)
- JANOG41.5 で「もっと気軽に始めるAnsible」という発表をしてきました - てくなべ (tekunabe)
- JANOG41 Meeting in Hiroshima 参加メモ - てくなべ (tekunabe)
- JANOG41で「勉強会のフィードバックから得られた自動化への壁」という発表をしてきました - てくなべ (tekunabe)