てくなべ (tekunabe)

ansible / network automation / 学習メモ

[Ansible] Junos の設定投入後に commit せずに candidate config を取得する

■ はじめに

Ansible は、Juniper Junos のネットワーク機器に対応していて、情報の取得や設定変更ができます。

Junos は設定投入後に commit することによって、実際の動作に反映されます。設定変更の流れの中で、commit 前の candidate config を確認したいこともあるのではないでしょうか。そこでこの記事では、Junos の設定変更後に commit せずに candidate config を取得する方法をご紹介します。

Junos はJuniper のラボサービス vLabs を利用させていただきました。(vmx 17.4R1-S2.2)

実現できるのは Galaxy モジュール

Junos 対応モジュールには、大きく分けて Ansible に標準で組み込まれているモジュールと、Ansible Galaxy 経由で提供されている Galaxy モジュールの 2 種類あります。

commit せずに candidate config を取得といったことができるのは、Galaxy モジュールのほうです。ここでは、juniper_junos_config モジュールを利用します。


■ 環境の準備

必要 Python パッケージのインストール

Galaxy モジュール を利用するためには junos-eznc(PyEZ) をインストールする必要があります。私の環境では、 jxmlease もインストール必要がありましたので合わせてインストールします。

pip install コマンドでインストールします。

$ pip install junos-eznc jxmlease

(参考) インストールしていないと、あとで Playbook 実行時に以下のようなエラーになります。

fatal: [vmx]: FAILED! => {"changed": false, "msg": "junos-eznc (aka PyEZ) >= 2.1.7 is required for this module. However, junos-eznc does not appear to be currently installed. See https://github.com/Juniper/py-junos-eznc#installation for details on installing junos-eznc."}

Galaxy モジュール のインストール

aansible-galaxy install Juniper.junos コマンドで対象の Galaxy モジュールをインストールします。

$ ansible-galaxy install Juniper.junos
- downloading role 'junos', owned by Juniper
- downloading role from https://github.com/Juniper/ansible-junos-stdlib/archive/2.1.0.tar.gz
- extracting Juniper.junos to /home/vagrant/.ansible/roles/Juniper.junos
- Juniper.junos (2.1.0) was installed successfully


■ Playbook の作成と実行

インベントリファイル

対象ホストの定義です。今回は1台を vlabs というグループで囲っています。

  • inventory
[vlabs]
vmx ansible_host=172.16.0.1

Playbook

投入したいコマンドを指定した Playbook を作成します。 コミットしないという commit: no と、candidate config を取得する retrieve: candidate オプションがポイントです。

  • junos_get_candidate.yml
- hosts: vlabs
  gather_facts: no
  roles:
    - Juniper.junos     # ロールの読み込み

  tasks:
    - name: set config and get candidate config
      juniper_junos_config:
        lines:                     # 投入コマンド
          - set system ntp server 10.0.0.123
        load: merge
        format: set                # set 形式で扱う
        commit: no                 # コミットしない
        retrieve: candidate        # candidate config 取得
        host: "{{ ansible_host }}" # 対象ホスト
      register: res
    
    - name: save file            # ファイルへの保存タスク
      copy:
        content: "{{ res.config }}"    # 改行入りコンフィグの文字列を指定
        dest: "{{ inventory_hostname }}_changed_candidate_config.txt" 

  vars:  # 説明簡略化のため、Playbook 内に変数定義
    ansible_connection: netconf
    ansible_port: 35000                # 環境の都合上指定、デフォルトは netconf の場合 830
    ansible_user: testuser
    ansible_password: testpass9999

host オプションのデフォルトは {{ inventory_hostname }} です。そのため今回のインベントリファイルでいうと、vmx になりますが、これは便宜上付けた名前であり名前解決できないので、{{ ansible_host }} (今回の場合 172.16.0.1) を指定しています。

なお、Junos 側に ntp server の設定が何もない状態からはじめることを想定しています。

実行と確認

playbook の実行

今回は、安全のため Playbook 側に チェックモード相当の commit: no を指定をしていいます。そのため、 ansible-playbook コマンドとしては --check オプションは不要ですが、ここでは意図を明確にするために --check をつけて実行しています。

$ ansible-playbook -i inventory junos_commit.yml --check
PLAY [vlabs] ****************************************************************

TASK [set config and get candidate config] **********************************
changed: [vmx]

TASK [save file] ************************************************************
ok: [vmx]

PLAY RECAP ******************************************************************
vmx                        : ok=2    changed=1    unreachable=0    failed=0

changed になりますが、あくまでコミットはしません。

取得した candidate config の確認

candidate config がファイルとして保存され、set system server 10.0.0.123 コマンドに相当するコンフィグが あること を確認します。

set version 17.4R1-S2.2
(...略...)
set system ntp server 10.0.0.123            # ある(想定通り)
set chassis fpc 0 pic 0 number-of-ports 8
set chassis fpc 0 lite-mode
set interfaces fxp0 unit 0 fami

Junos 側の確認

Junos 機器側には、set system server 10.0.0.123 コマンドに相当するコンフィグが ないこと (commitしていいないため)を確認します。

jcluser@vMX-0> show configuration system ntp
                # ない(想定通り)
jcluser@vMX-0>


■ まとめ

Ansibleで、Junos の設定投入後に commit せずに candidate config を取得する方法をご紹介しました。

投入しようとしている部分的なコンフィグが、文法エラーなどによってはじかれてしまうのではないか、という不安を解消するには、机上チェックではなかなか難しいです。

実機に投入後、commit せずに canndidate config を取得すれば、その不安を解消できると思います。また、candidate config には想定する作業後の全行のコンフィグが含まれています。これを例えば、さらに Batfish に読み込ませて、実機反映前に事前検証するといった用途が考えられます。

参考にしていただければ幸いです。