てくなべ (tekunabe)

ansible / network automation / 学習メモ

[Ansible/AAP] AnsibleFest 2025 のキーノートで気になったポイント(Autoamtion Dashboard、Ansible Lightspeed Intelligent Assistant、HashiCorp 連携)

はじめに

2025/05/19-22 (現地時間)、ボストンで Red Hat Summit 2025 と AnsibleFest 2025 が開催されていました。一昨年からこの 2つのイベントが合同開催になりました。

私は現地には行っていませんが、両イベント合計3つのキーノートを YouTube Live で見れました。

このうち、AnsibleFest のキーノートの気になったパートの個人的なまとめと所感を記載します。

自動画の文字起こしや翻訳を参考にしていますが、私のまとめは誤訳や誤解があるかもしれません。正確な情報は動画などの公式情報を直接参照してください。

なお、イベント開催数日後に、(YouTubeのものではない)翻訳を付けたものが Red Hat TV にアップされました。

Detail - AnsibleFest 2025: Automators, unite! Driving transformative change in the AI era

Autoamtion Dashboard

動画は 40:18 頃から。

概要

AAP に、自動化がどう効果があるかを測定できる Automation Dashboard という機能が追加される予定だそうです。

以下が Automation Dashboard の画面。成功、失敗のジョブ数や、自動化の処理時間、自動化機器台数などが表示されています。様々な条件でフィルターもできます。

Automation Dashboard 画面上部(キーノート動画 40:55 頃からの引用)

下にスクロールするとカスタマイズがフォームが登場します。

  • ベース情報
    • Average cost of an employee minute ($)
    • Cost per minute of AAP ($)
  • ジョブテンプレートごと
    • Time token manually execute 手動の場合にかかる時間

これらの情報をもとにして、自動化が手動に比べるとどのくらい効果があるかが金額ベースで算出されます。

この機能による情報が、自動化を戦略的に行っていくための意識決定に必要な情報になっていくとのことです。

Automation Dashboard 画面下部(キーノート動画 41:20 頃からの引用)

エクスポート機能

PDF や Excel ファイル、Google スプレッドシートエクスポートする機能もあるので、AAP に直接アクセスしない立場の人に提出するというユースケースも想定されるのだと思います。

提供予定状況

Automation Dashboard は、まず Early Adaptor Program (詳細は分かっていません)で利用でるようになるそうです。

既存の機能「Automation Calculator」との関係は?

Automation Dashboard の画面に若干の既視感がありました。現状の機能でいう Automation Calculator の上位版といった感じでしょうか。

以下は私の環境の AAP 2.5 2025/4/9 パッチリリースにおけるAutomation Calculator の画面です。各項目は Automation Dashboard のものと似ていますね。ただ、エクスポートできるボタンは見当たりません。このあたりが差分でしょうか。

自宅環境の Automation Calculator 画面(値は適当)

Ansible Lightspeed Intelligent Assistant

動画は 1:03:58 頃から。

概要

これまで、Ansible Lightspeed といえば、VS Code の拡張経由で利用する 生成AI による開発支援機能でしたが、これはまた別物です。

Ansible Lightspeed Intelligent Assistant は、AAP の画面に統合されたチャット機能のようなものです。

以下の画面で、右の方にチャットのエリアがあります。 AAP についての初歩的な質問「What is a job template and how does that relate to an Ansible Playbook?」をして、回答を得ている途中の画面です。

基本的な操作説明(キーノート動画 1:05:03 頃からの引用)

他にも「How do I create an EE?」と聞くと、詳細な手順についての回答が得られる様子がありました。

説明だけでなく設定も可能

「Build me a job template to deploy my application mendoza to my ChapelHill inventory」というプロンプトでは、実際に 画面の操作(ジョブテンプレートの作成)まで してくれている様子が紹介されていました。

ええ・・!?これは 1:06:15 頃からの動画を見たほうが早いです。最初は手入力の早送りかと勘違いしました。

自動で入力、設定されていく様子(キーノート動画 1:06:44 頃からの引用)

トラブルシューティングの支援

他にもトラブルシューティングの支援のデモもありました。

概要は以下の通りです。

  • 直近24時間でもっとも失敗したジョブテンプレートは?と聞くと、TOP3がs評された
  • トラブルシューティングを依頼すると、問題がある RHEL サーバーがリストアップされた
  • 仮想マシンの情報を取得して、と依頼すると それ用のジョブテンプレートが自動的に作成されて実行された
  • 検出された問題の修正を依頼すると、やはり それ用のジョブテンプレートが自動的に作成されて実行された

うまくハマれば強力そうですね。

利用方法

既に Technical Preview として利用できるようになっているそうです。

紹介されていた構成は完全にオンプレで、インターネットへの接続性がなくても操作可能な状態。デプロイは難易度が高めのように感じました。OpenShift でデプロイし、Red Hat AI(詳細はまだ追えてません)をバックエンドに利用するそうです。あとで公開された公式ブログでも、下の方に要件として「Red Hat OpenShift Container Platform」「Red Hat AI platform」とあります。

将来的には、Ansible Lightspeed Intelligent Assistant が MCP を経由して様々なものと連携するようになる予定だそうです。この辺りはやはり動きは激しそうな気がします。

安全に利用するためのポリシー適用

デモでは、本番環境をいきなり AI に操作してもらっていたことを差し「pretty cool」という冗談で笑いを誘いました。

AI で生成したかどうかに関わらず安全に実行したいものです。ガードレール的な機能として、ポリシーを強制的に適用する機能が追加されるそうです。

ジョブテンプレート設定画面のポリシー適用欄(キーノート動画 1:09:21 頃からの引用)

ここでいうポリシーとは、2024 年の AnsibleFest のキーノートでも発表があった「Policy as Code」や、ansible-policy と同じ文脈だと思います。

今年のキーノートでは、AWSインスタンスをデプロイするジョブテンプレートに対して「デプロイしようとしているものの性能が、指定の範囲内か」といったポリシーを適用するデモが流されていました。

偶然なのですが、少し前に AAP のドキュメントにポリシー適用に関するページを見つけたところでした。現状ではフィーチャーフラグを立てる(おそらく API でのみ立てられる)と使えるようになる模様です。OPA まわりで色々準備は必要そうですが、おもしろい機能だなと思いました。

[2025/0714 追記]

後日 2025/07/02 のパッチリリースで、policy enforcement が GA になったようです。

All UI elements related to policy enforcement are visible to all users. See the policy enforcement documentation for more information. (AAP-47006)

なお、どんなポリシーが書けるのか?については、サンプルらしきリポジトリを見つけました。たくさんあってありがたいです。

GitHub - ansible/example-opa-policy-for-aap: Example OPA policy for Ansible Automation Platform

[2025/07/10 追記] リポジトリansible 配下に引っ越ししてました。

GitHub - ansible/example-opa-policy-for-aap: Example OPA policy for Ansible Automation Platform

参考:

HashiCorp 製品と AAP 連携

動画は 9:51 頃から。

今回は、IBM による HashiCorp 社買収が完了してから、初めての AnsibleFest です。

各社のプロダクトのコラボレーションが強調されました。Ansible と Terraform は競合じゃない、など。

現状でも、Ansible 側から Terraform を実行したり、Terrafrom のステートファイルからインベントリを生成したりできる cloud.terraformコレクションがあります。逆に、Terraform 側にも ansible/ansible や、ansible/aap プロバイダーがあり、一定の連携はできます。

さらに連携を強めていくといった趣旨のようです。HashiCorp 製品に詳しくないのでざっくりですが、以下のような話があがっていました。

  • Terraform Enterprise に AAP のワークフローを呼び出す Post Provisioning Hook が追加される予定
  • Ansible と HashiCorp Vault の連携予定

参考:

番外編(通常セッションの資料をたまたま発見)

キーノートではないのですが、「Creating sustainable automation content, the Ansible way」というセッションで使用されたらしき資料のリンクが、Ansible Forum にありました。

forum.ansible.com

個人の環境差分をなくしたり、チームでの開発をうまく進めるためのあれこれが、ツールや手法視点で紹介されています。

Ansible 関連のツールをひとまとめにした、ADT(Ansible development tools)についても触れられています。

おわりに

AnsibleFest 2025 のキーノートのうち

  • 自動化の効果を定量的に示す「Automation Dashboard
  • AI が AAP の操作を支援してくれる「Ansible Lightspeed Intelligent Assistant」
  • HashiCorp 製品との連携

についてまとめました。

キーノート以外にも気になるセッションがたくさんあるのですが、何かしらの方法で今後情報が得られると嬉しく思います。

参考(再掲含む)

[2025/06/30 追記]