てくなべ (tekunabe)

ansible / network automation / 学習メモ

Interop Tokyo 2025 参加レポート(主に ShowNet)

はじめに

2025/06/11-13(現地展示期間として)に開催されたInterop Tokyo 2025に参加してきました。

ShowNet の展示やセッションを見てきましたので、いくつかまとめます。

※ 口頭で聞いたあいまいな記憶を思い出しながら書いた記述が含まれます。正確な情報は一次ソースをあたっていただくようお願いします。何かご指摘ありましたら @akira6592 にご連絡いただけるとありがたいです。

■ 1. ShowNet 関連

Interop といえば ShowNet。

ShowNet は、多くのベンダーの最新鋭の機器を実際に動作させて相互接続性(Interoperability)を検証する大規模なネットワークです。来場者や展示ブースからのインターネット接続性を提供する役割も持っています。新しくて分からないものが満載ですが、毎年これを見るのがたのしみにしています

この記事では、各ラックで気になった機器や、ShowNet ステージ(解説してくれるプログラム)についてまとめます。

1.1. ShowNet ラック

各ラックで気になった機器についてです。

対外接続回線 / 対外接続ルータ (#N-1 / #N-2 ラック)

#N-1

#N-2

ShowNet と外を接続する部分。合計2.335Tbps。

足元にはいつものように、対外接続の線が見えるようになっています。IPA との線があるのが今年の特徴でしょうか。

対外接続の線(足元)

BGP によるピアリングには、認証方式として、MD5 ではなく TCP-AO (Authentication Option)も採用したそうです。

TCP-AOの説明(ラック横ホワイトボード)

TCP-AO は初見だったので、A0 (エーゼロ)か、AO(エーオー)か分からなかったのですが「エーオー」が正しいとしっかり覚えました。トランスポート層での認証なのだそうです。

TCP-AO について(スライド資料より)

[2025/07/03 追記] 参考スライド

speakerdeck.com

コアネットワーク (#N-3 ラック)

コンテナでルートリフレクターを構築しているそうです。

XRd と cRPD

セキュアリモートアクセス (#N-5 ラック)

ShowNet の機器をリモートからアクセスするための機器たちです。方式は4種類あって、その中の SMART GATEWAY という機器ではブラウザがあればアクセスできる仕組みなのだそうです。手軽ですね。

マネジメントネットワークは広い L2 で構築されているようですが、作業者の担当ごとにアクセスできる機器が制限されているそうです。

VXLAN-GBP という仕組みで実現され、「マイクロセグメンテーション」という言葉が出てきました。GBP を BGP に空目してしまったのですが、Group Based Policy の略だそうです。

参考: VXLAN Group Based Policyを利用したマネージメントセグメント:Geekなぺーじ

セイコーソリューションズ アクセス管理ソフトウェア SmartJumper もこのラックに入っていました。

#N-5上部

[2025/07/03 追記] 参考スライド

speakerdeck.com

サイバー脅威検出 (#N-6 ラック)

光の TAP アグリゲーターとして Juniper の QFC5220-32CD が稼働していました。そもそも TAP アグリゲーター自身初めて知りました。

TAP アグリゲーター

統合監視 / フロー監視(#N-7 ラック)

Packetmaster EX5 という機器で、監視トラフィックを集約・転送しているそうです。結構なトラフィック量になるのではないでしょうか。

Packetmaster EX5 など

高密度パッチパネル / ロボット配線システム(#N-8 ラック)

去年知っておもしろいなと思った、高密度ながらも両脇のポートが避けてくれるような仕組みのものは、「揺動カセット」と呼ぶことを今回知りました。

揺動カセット

ネットワーク品質検査(#N-9ラック)

弊社が、今年もコントリビューターとなって、ワークテスト自動化製品 NEEDLEWORK が利用されていました。昔は物理アプライアンスだった本製品ですが、今は Windows で動く exe のソフトウェアです。NEEDLEWORK がインストールされた小さな筐体がラッキングされていました。

NEEDLEWORK と後述の ROME mini

よく見ると、筐体には NEEDLEWORK のロゴが見えます。

NEEDLEWORK のロゴが見える

また、本ラックの下の方には 光配線切替ロボット ROME mini がありました。検査をするにあたって、いろいろ接続を切り替える必要があるので、こちらが大活躍するそうです。ここ数年、毎回眺めていますが実際にがちゃがちゃ動くところを拝めていません。今回は最終日の 16:00 頃から動かす予定、と書かれていましたが、予定が合わずでした。

エンタープライズネットワーク (#N-10 / #N-11 ラック)

400GbE 対応のインラインのファイアウォールとして、Juniper Networks SRX 4700、Palo Alto Networks PA-7500 が動いていました。

400GbE 対応のインラインのファイアウォール

ホワイトボードに書かれている「ラスリゾ」は「ラストリゾート」のこと。ShowNet におけるラストリゾートは、Juniper Networks SRX4600 が動いていました。各機器の障害時にも対応できるように用意された、迂回経路を確保するためのもののようです。

ラスリゾ

トポロジー図でいうとほぼど真ん中。今まで気が付かなかったのですが、確かに去年のトポロジー図にもありました。

トポロジー図吹き出し追加

Wi-Fi / オペレータ用ネットワーク(#N-12 ラック)

会場内で利用できる Wi-Fi として、Wi-Fi 6E や Wi-Fi 7 のような新しい規格に対応する AP が動いていました。一番多いのが Wi-Fi7 対応の 41台。

効率化の技術と、法律的な認可の組み合わせで、広帯域や低遅延などでより品質が高くなっていきますね。

#N-12

参考: 6GHz帯の専用SSIDを用意、今年の「ShowNet Free Wi-Fi」。Wi-Fi 7のMLOも、とあるブースで体験可能【Interop Tokyo 2025】 - INTERNET Watch

[2025/07/03 追記] 参考スライド

speakerdeck.com

5G (#N-13 ラック)

去年までの数年間はローカル 5G の取り組みがありましたが、いったん落ち着いたということで、今年はキャリア 5G 連携がテーマになっていました。「閉域」というのもポイントでしょうか。

全国の放送局との映像転送で使っているそうです。

#N-13

[2025/07/03 追記] 参考スライド

speakerdeck.com

Media over IP / Media-X 時刻同期システム (#N-14 ラック)

時刻同期の仕組みとしては、GPS アンテナが2本立っていて、途中で光ケーブルを経由して、まだ同軸になって、グランドマスタにつながっているようです。

時刻同期系

NTP より精度高い時刻同期の仕組みを持つ PTP は、映像分野などで活躍するそうです。

時刻同期はA系、B系と冗長化されて用意されています。以前聞いたお話ですと、屋上のGPSアンテナの雷対策なんだとか。備えが必要なほど重要なのですね。

Media over IP / Media-X network (#N-15 ラック) 

リアルタイムで映像を最適化する機器として、Vecima Solutions KeyFrame が動いていました。この分野は疎いのですがいろいろすごい機器があるものですね。

VECIMA ロゴのある上の 2U の機器が KeyFrame

また、今年は Media over IP という言葉以外にも Media-X という言葉も目立ちました。

参考: Media―Ⅹが魅せた放送コンテンツ共有のミライ~在阪4局が共同でMoIPを実証実験 | 電波タイムズ | 日本唯一の放送・情報通信の専門紙の電波タイムズのニュースサイト

連携している放送局が去年より増えている気がします。

放送局連携

[2025/07/03 追記] 参考スライド

speakerdeck.com

インテントベースドネットワーキング/仮想化基盤 (#D-2 ラック)

ラックのタイトルに「インテントベースドネットワーキング」が含まれるのには少し驚きました。

具体的には、Apstra Data Center Director が入っていました。

インテントベースドネットワーキング

RoCE v2 ネットワーク・AIコンテナ基盤 (#D-4 ラック)

キーワードでしか追えてないですが「Ultra Ethernet」という文字が。AI向けの高速なネットワークの仕組みだそうです。分散処理するにあたって効率よく通信させる必要があるということでしょうか。

Ultra Ethernet

この辺りはトポロジー図で見ると 400G / 800G の太い線があるところですね。

参考: RoCEとUltra Ethernetの検証:ShowNet 2025:Geekなぺーじ

1.2. ShowNet ステージ: AI基盤からエッジまで、多様化するネットワークとテストの進化

ShowNet ステージは、NOCチームメンバーなどのみなさんから、ShowNet で使われている機器や技術、取り組みなどの紹介がされるプログラムです。

気になっていた分野ですが、スケジュールをミスって最後の数分間しか聞けませんでした・・。

OTG はここ数年 ShowNet や JANOG で聞き始めた言葉で、気になっています。

試験自動化について(スライド資料より)

最後に、弊社のネットワークテストの自動化 NEEDLEWORK によってコントリビュートしていることを確認できました。ご紹介ありがとうございます。

検証分野のコントリビューター一覧

[2025/07/03 追記] 参考スライド

speakerdeck.com

1.3. ShowNet ステージ: ShowNetに特化させた生成AI Chatbotはどれほど構築・運用の助けになったのか?

今回、ShowNet の構築、運用を支援するため Chatbot を開発して利用されたそうです。

セッションにある「ShowNetに特化」というのは以下によるところです。

  • 昨年の ShowNet の機器設定、今年の設計資料、今年の運用ガイドをベクトルデータベースにいれた RAG を構成。Azure OpenAI Serviceを利用
  • MCP 経由で実際に ShowNet の機器に SSH 越しにCLIで操作upa/netmiko-mcp-serverを利用
    • 別の記事によると、情報取得系の操作に限定している模様
  • MPC 経由で チケットシステムを参照

構成図

これによって、ChatGPT のようなUI(今回は chainlit)で、インターフェースの情報を表示させたり、チケットの情報を表示させたり、トラブルシューティングの支援をしてもらったりできます。ガイドラインも読み込んでいるため、ガイドラインに即した回答をしてくれるようです。

チャットの流れは以下のデモ動画が分かりやすいです。

www.youtube.com

今回肝なのが、はたしてこれが有用だったのかというフィードバックを収集している点です。実際の ShowNet のような規模の環境で、100人以上(確か)が実際に Chatbot を使ってもらって、回答ごとに Good 👍️ や Bad 👎️ をフィードバックする方式です。

このセッションでの速報値としては Good が「6割弱」だったそうです。なかなか解釈に悩むリアルな数字な気がします。

6割弱

複雑なトラブルシューティングについては、熟練者が対応したほうが早いケースもあったようす。一方で、機械に任せるということはスケールさせやすくなる面があるため、全部人がやればいいという話でもありません。やはり使い分けは必要そうです。

使ってみて

現在と未来

なお、最終的な結果や詳細については JANOG 56 で発表があるそうですので、楽しみです。

www.janog.gr.jp

[2025/06/25 追記]

www.janog.gr.jp

参考記事: 生成AIによるネットワーク構築・運用支援実験 : ShowNet 2025:Geekなぺーじ

1.4. ShowNet セルフツアー

セルフツアーという取り組みがあったので、利用させていただきました。

www.youtube.com

まず、ホール4エスカレター付近の申し込みカウンターで端末をお借りします。そして、ShowNet のラックに移動すると、付近のラックに関する情報をタブレット上で見られるというものです。Juniper Mist AP シリーズの vBLE 機能によって位置情報が解析されるそうです。

以下のような感じで位置情報が可視化されます。青いのが自分で、各ラック前の黄色い印を目指す形です。位置情報の認識にはラグがあるので、慌てずゆっくり利用しました。

マップ

実際に見られるのは NOS メンバーによる解説や資料です。

資料は、ラック横や Side View(出島(#D-*ラック)の横にあるスライド表示エリア)で流れるもので、これが手元で見られる点が良かったです。資料は自動ページ送りされるのを見るのではなく、自分でページを繰りできるので助かりました。いつもこの資料を会期内にちゃんと見たかったので。(待てば後日 SpeakerDeck 関連資料が公開されると思います)

タブレット貸出の時間制限は30分。のんびりしていたら最後の方はバタバタしてしまいました。

ShowNet ウォーキングツアー(1,000円)や、テクニカルツアー&セッション(10,000円)は、予約が埋まったり時間が決まったりしているので、ややハードルが高いかもしれません。

一方、セルフツアーは、タブレット端末貸出の申込みこそ必要なものの、自分の時間で利用しやすく無料なので、手軽でアリだなと思いました。このような仕組みを用意していただいてありがたいです。

参考: 以下動画 6:41 頃から仕組みの説明

youtu.be

■ 2. 展示場内セミナー

参加した展示場内セミナーについてです。

2.1. Intentへの挑戦 ― 自律型ネットワークの未来を拓く

COMARCH 社が提供する、生成AI を活用した Intent-Based (意図)なネットワーク管理のプロダクトの紹介でした。

これまでも Intent-Based なプロダクトや手法は見聞きしてきましたが、特徴的だと思ったのは、ビジネス、サービス、リソースの各領域での生成AIの活用です。 意図といってもいろいろな抽象レベルがあります。これまで以上に、幅広い抽象レベルでやり取りできるのかなと興味深かったです。

ビジネス、サービス、リソースの各領域

AIエージェント同士の連携による障害対応

詳細に紹介されたのは障害対応における活用です。

トラブルチケットなどを起点にして、 AI エージェント「たち」が連携して、解決に向かわせるというものです。

各エージェントには専門分野があって、相互に連携し合って自律的にすすめてくれるそうです。キャラ(?)がついてることもおもしろいです。

具体的には、エージェント同士が以下のような会話を展開していきます。

エージェントたちの会話

特徴的だと思ったのが、そのエージェント同士の会話のやり取りを人間が確認できることです。「で、結局どういう理由で何してくれたの?」が分かり、透明性を高めるためには必要な機能だと思いました。

詳細を聞き逃してしまいましたが、ネットワーク環境のデジタルツインを用意して、変更作業を事前に検証できる機能の紹介もありました。個人的な感覚の話ですが、この業界でも「デジタルツイン」という言葉を利用することが多くなってきた気がします。

対応しているネットワーク機器が気になって、あとブースによってさらにお話を伺ったところ、さまざまなネットワーク機器に対応しているとのことでした。

OSS、 Autonomous Networks Level

途中 OSS という言葉がでてきましたが、後で調べたら Open Source Software ではなく、「Operations Support Systems」のことのようです。

順番が前後してしまいますが、途中で自律性レベルのお話がありました。どの作業までを人がやるのか、システムがやるのかによってレベルが分けられています。このレベル分けの定義は今回初めて知ったので参考になりました。TM Forumというオペレーション団体にて定義されているのですね。

自律性レベル

参考: オペレーション標準化団体TM Forumの動向 | NTT技術ジャーナル

■ 3. ブース

近年はブースを回れるうまい段取りができず、あまり回れていません・・・。

3.1. セイコーソリューションズさん

共同のインラインウェビナーなどでお世話になっているセイコーソリューションズさん。

今回は、弊社ブースの真裏でした。弊社ブースから「AnsibleとSmartCSの連携によるZTPのご案内はこちらへ」という導線がひかれていました。

ブースにはアクセス管理ソフトウェアSmartJumper のキャラである、ジャンガくんがいました。

ジャンガくん

参考: 『Interop Tokyo 2025』(2025年6月11日(水)~13日(金)・幕張メッセ)に出展します | セイコーソリューションズ株式会社

https://f2ff.jp/2025/interop/exhibitor/show.php?id=3001&lang=ja

3.2. YAMAHA さん

ネットワーク機器事業は2025年3月で30周年を迎えたそうです。

年表

やや記憶があやふやですが、私が仕事でいちからルーターを設定した初めての機器は RTX1000 (2002年10月発売)でした。なので思い入れがあります。

上司から提示された複数の機器の中から、私が YAMAHA を選択しました。ヤマハさんがルーターも作っていることを知ったのはその時でした。以降の案件でも、特に VPN 系の案件では RTX シリーズや RT シリーズをよく利用しました。

参考: ヤマハ、小規模単拠点向けの無線LANルーターを参考展示 100GbEアップリンク対応スイッチも - クラウド Watch

https://f2ff.jp/2025/interop/exhibitor/show.php?id=3168&lang=ja

3.3 エーピーコミュニケーションズ(弊社)

ネットワークテスト自動化製品の NEEDLEWORK や、Wi-Fi同時接続テストの AirThreads、ITインフラ運用の自動化支援サービス(弊チーム)の展示です。レッドハットの方にもブースに立っていただき感謝です。

ご来場いただいたみなさま、ありがとうございます!

弊社ブース

https://f2ff.jp/2025/interop/exhibitor/show.php?id=2846&lang=ja

また、今回はシスコさんのパートナーブースの方で、ネットワークSI をしている部署が ファイヤウォールの移行ツールなどの紹介をしていました。この部署は初出展ですが、多くの方がいらして盛り上がっていました。

パートナーブース

動画も撮っていただいたみたいです。ありがとうございます。

www.youtube.com

https://f2ff.jp/2025/interop/exhibitor/show.php?id=2864&lang=ja

おわりに

今年も ShowNet の機器や取り組みの情報収集を中心におこないました。

AI の話を聞くことが多くなり、私からすると壮大な話から、現実的な話までさまざまです。ネットワークの世界は、より早く、より小さく、より高密度で、より省電力で、といったことが進化として挙げられることが多いですが、AI の話はまた毛色が違うようにも思いました。来年もおそらくよく話には上がってくるのだと思います。

ShowNet の構築、運用に関わった NOC、STM のみなさま、ブースでご対応いただいたみなさま、ありがとうございました!

なお、ShowNet のより詳しい説明がされる shownet.conf_ は、今年は 2025/09/11 - 12 に開催されるそうです。今年も無料!

f2ff.jp

参考

gorosuke5656.hatenablog.com japan.zdnet.com cloud.watch.impress.co.jp note.com nttdocomo-developers.jp

Speaker Deck | Easily Share Your Presentations Online

ShowNet 2025 説明スライド集 - YouTube